京都佛立ミュージアムについて
しかし、今なお人の心を癒す「生きた仏教」の展示をお楽しみいただくことが出来ます。京都に数ある仏教寺院の美しい庭園や建造物、静かに微笑む仏像が「静寂の仏教」とするなら、当館でご覧いただけるのは今この時も動きを止めない「躍動の仏教」です。時は幕末、激動の大変革期。形骸化した仏教は、戸惑う人々に寄り添うことなく、衆生救済という本来の使命を見失っていました。しかし、この京都の地に後世「幕末・維新の仏教改革者」と呼ばれる一人の僧侶がいました。その名は長松清風。
清風は、民衆の手に仏教を取り戻し、人々の苦悩の中で生涯を過ごしました。その人柄や才能は、当時の京阪で知らぬ者がないほど魅力に溢れていました。当ミュージアムでは、幕末に匹敵する混乱期を迎えた現代だからこそ、「生きた仏教」を体現した清風の視点で、古くて新しく、シンプルな幸せの価値観をご紹介します。見応えある様々な企画展を開催しながら「生きた仏教」をお見せしてゆきます。長松清風と生き続ける仏教の姿をご観覧いただき、多くの方々と共に心豊かな世界への扉を開くことができればと思っております。
幕末維新の頃、政治が混乱を極めた江戸末期にあって、治世に利用されて本来の衆生救済の目的を見失った仏教もまた混乱と退廃を余儀なくされていました。しかし混乱するこんな世の中にこそ、本当の仏教が必用なはずだと仏教改革に立ち上がった僧侶がいました。
彼の名は長松清風。
のちに長松日扇聖人と称される、現在の本門佛立宗の開祖です。もともと裕福な商家に生まれ、書画の達として名をなし、国学や平安文学を修め、宮中に教師として出向くほどの才能があった清風は、その深い洞察力から生きる目的を読み解く究極の教えが仏教であることにたどり着きます。
そして仏教の中でも法華経本門の教えが群を抜いて完全で優れていることを理解し、本能寺の変で有名な本門法華宗の高僧のもとで出家得度し、修行生活に入りました。しかし、仏教は政治に利用され官庁的な役割、あるいは葬送などの儀式的な役割に転じ、僧侶は民衆とは離れた高貴な存在として扱われ、清風が目指す衆生救済という目的とはかけ離れた状況に陥っておりました。そこで清風は数々の圧力や迫害を覚悟の上で一時は還俗もし、在家という衆生の中に入り込んでの仏教改革に乗り出します。
在家主義という、今までの寺院の在り方を脅かすスタイルと、現証ご利益という目に見える奇跡が多発したことにより、彼の率いる本門佛立講は急激に広まり、また他宗からの迫害は熾烈を極めました。京都府知事の介入で改めて出家僧となった清風は弟子を育成し、京都北野の宥清寺を本山としてその教線を全国に広めました。清風の目的はただひとつ、本来の仏教を民衆に広め、ブッダの目指した衆生救済と同じく市井の人々の中に共に生きて、同じ目線で寄り添い、仏教によって得られる真の安穏をできるだけ沢山の人々に伝え広めることでした。
寺院を大きくすることでも、宗団を有名にすることでもなく、ひたすら教えを乞われれば遠方であろうが徒労を厭わずに出向き、病に伏すものがあれば寝食を忘れて共に祈り、74年の生涯を信徒宅に出向く船旅の中に終えました。
学者としても名を馳せ、本門佛立講の発展によって当時の京都の町では知らぬものがないほどの僧侶となっていた清風は、晩年において自らのことを「何も知らぬただのおやじ」と言い放ち、ただ物事の本質を愛して、仏教によって救われる人々を救い尽くしたいという純粋な思いひとつで衣や財産にも執着せず、俗世に生きながら欲から離れて、お題目を唱えればそのまま成仏の境地であることを伝え、体現し続けました。僧侶でありながら、山にこもって修行に専念する僧侶や衣や位にこだわり、名誉欲に驕る僧侶を強烈に批判もし、墨染めの衣を愛用し、題目口唱と弟子らの教育に明け暮れたと言われています。現在も彼の遺志は弟子や信徒に受け継がれ、今も世界各国に広まり、僧侶は365日、24時間体制で現在も衆生救済を最優先に、生きた仏教を伝え続けるため日夜奔走しています。
京都府京都市上京区御前通一条上る東竪町110
開館時間 [平日] 10時 ~ 16時 [土・日・祝] 10時 ~ 17時
休 館 日 月曜日、展示替え期間
入 館 料 無 料
- ■JRをご利用の場合
- JR京都駅下車、市バス50・101系統にて 「北野天満宮前」下車 徒歩2分
- JR二条駅下車、市バス55系統にて 「北野天満宮前」下車 徒歩2分
- JR円町駅下車、203系統にて 「北野天満宮前」下車 徒歩2分
- ■地下鉄をご利用の場合
- 今出川駅下車、市バス51・102・203系統にて 「北野天満宮前」下車 徒歩2分
- 二条駅下車、市バス55系統にて 「北野天満宮前」下車 徒歩2分
- ■京阪をご利用の場合
- 出町柳駅下車、市バス102・203系統にて 「北野天満宮前」下車 徒歩2分
- 京阪三条駅下車、市バス10系統にて 「北野天満宮前」下車 徒歩2分
- ■阪急をご利用の場合
- 大宮駅下車、市バス55系統にて 「北野天満宮前」下車 徒歩2分
- 西院駅下車、市バス203系統にて 「北野天満宮前」下車 徒歩2分
- ■京福電車をご利用の場合
- 白梅町駅下車 徒歩5分