2014.02.24「宮沢賢治と法華経展」図録刊行のお知らせ 東日本大震災から3年ー。
大地震と大津波、そして原子力発電所の爆発とメルトダウンを併発した東日本大震災は、誰もがこの世の終わりを予感した未曾有の大災害でした。
多くの人が、あの大震災を社会や人生の分岐点にすべきと考え、行動を起こしました。
そこには、新しい気づきがあり、新しい出会いがあり、新しい絆も生まれました。
そして、3年という月日が流れました。
私たちは、新しい幸せの価値観を手にすることが出来たでしょうか。より良い社会に向かっていると、胸を張って言うことが出来るでしょうか。
あの日の記憶もあの日抱いた希望も遠ざかり、淡いものになりつつあります。
被災地・東北岩手に生まれた国民的作家・宮沢賢治は、明治三陸大津波・陸羽地震の年に生まれ、昭和三陸地震・大津波の直後に世を去りました。東日本大震災以降、私たちが確かな幸せを求める中で、彼の遺した言葉や作品は、きらきらと、ぽかぽかと、輝きやあたたかさを増して、ますます私たちに迫ってきます。
震災発生から僅か4日後、2011年3月15日、為す術もなく過ぎた数日間、俳優・渡辺謙氏は小山薫堂氏と共に人びとへの希望をつなぐメッセージサイト「kizuna311(http://kizuna311.com)」を立ち上げました。そして、発起人である渡辺氏はその最初の行動として賢治の『雨ニモマケズ』の朗読とYouTubeへのアップを選びました。2分35秒、渡辺氏はただ淡々と賢治の『雨ニモマケズ』を朗読しました。
誰に向けるともなく、ただ淡々と。その動画は大きな反響をもたらし、92万件を超えるアクセスを記録して、今でも視聴され続けています。
「雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
ツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ蔭ノ
小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ……」
賢治の没後5ヶ月後に発見された黒皮の手帳と『雨ニモマケズ』。自分を言い聞かせるように書いた賢治の言葉は、何を強いるわけでもなく、誰に求めるわけでもなく、被災された方々、それを見守る方々、そこに向かう方々、一人ひとりの、一つの心の置き場所として、深く深く響いてゆくのでした。
なぜ、賢治はそう思えたのか。
思いやりと慈しみを抱き、実際の行動を促す「行ッテ」の思想。時空を超えた宇宙の中でまっすぐに生きる大切さを物語に綴る賢治。彼の作品や言葉は、一体どこから生まれたのか。
私たちは、様々な人によって様々に解釈されてきた賢治を、彼が終生離さなかった法華経信仰の立場から見つめました。
臨終の日、彼は「『国訳妙法蓮華経』を千部印刷し、生前私が出会った人びとに配布してもらいたい」と遺言しました。ご家族は賢治が準備した「あとがき」を添えて、遺言のとおりに法華経を刊行しました。今回の企画展では、宮澤和樹氏から宮澤家が千部作製したその実物の一つをお借りし、展示させていただきました。
賢治の準備した「あとがき」は次のような文章でした。
「合掌
私の全生涯の仕事は、此経をあなたの御手元に届け、そして其中にある佛意に触れて、あなたが無上道に入られん事を御願ひする外ありません。」
賢治を理解しようとする時、この言葉、この願い以上に、明確な視座はないと考えます。なぜなら、この言葉は、賢治自身が身命を賭した、切実な願いの発露であり、賢治の生命の、生存理由の表明だと思えるからです。
法華経から照らせば見えてくる賢治。法華経を重ねれば理解できる賢治の作品。
知っているはずなのに、あまり語られず、触れられもせず、照射されずにいた賢治。
類推や思いつきを戒め、彼自身の言葉を辿りながら、彼が私たちに伝えようとした「ほんとうのさいわい」「ほんとうの道」に迫りました。
「宮沢賢治と法華経展 雨ニモマケズとデクノボー」
法華経信仰から見つめた賢治。どこにもない、ここでしか見られない企画展となりました。
ここに、展示資料の全てを収録した図録を刊行させていただきます。付録のDVDには、館内で放送したオープニング・エンディング映像、オリジナルの映像紙芝居、京都佛立ミュージアムの生涯学習プログラム・テラコヤスコラにご登壇いただいた宮澤和樹氏のご講演等、充実の内容となっています。賢治の遺言と同じく、初版千冊を印刷して、皆さまのお手元にお届けしようと思っております。
童話集『注文の多い料理店』の序に、
「わたくしは、これらのちひさなものがたりの幾きれかが、おしまひ、あなたのすきとほつた ほんたうのたべものになることを、どんなにねがふかわかりません」
と記しています。
私たちも、多くの方にこの図録をお届けし、この中にある幾きれかが、皆さまの人生の糧となることを願っております。
お子さまから大人まで楽しめる内容、宮沢賢治を理解する上で欠かせない貴重な資料や考察が詰まっています。是非、自分用、お友達用、子どもたちの勉強のためなど、一人でも多くの方々にお求めいただきたいと思います。
インターネットにてお申し込みの方は、(
info@hbsmuseum.jp)まで住所・氏名・電話番号、メールアドレス(送信アドレスと異なる場合のみ)、冊数を明記の上、お申し込みください。後ほどこちらからお振込の情報などをお送りさせていただきます。
よろしくお願いいたします。
ありがとうございます。
平成26年2月 京都佛立ミュージアム
銀行振込の場合:
1冊の場合/
本体価格(1,000円)+送料(80円)+振込手数料(お客様ご負担)
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本体価格(1,000円)+※送料+振込手数料(お客様ご負担)
※送料(関西・中部・北陸・中国 500円、関東・甲信・九州・四国 600円、東北 700円、北海道・沖縄 1,200円)
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